母と歩けば
2022年 09月 07日
時々、88歳の母と一緒に散歩をします。
負担にならないように、涼しい日、時間を選んでの短い散歩です。
そして、それは自分のためのウォーキングとは質も量も全く別の物で、
ご近所をゆっくり、転ばぬように気を配りつつ、お喋りをしつつのそぞろ歩きです。
あるお家の庭に、芙蓉の花が咲いていました。
それを見ながら、母が言います。
「芙蓉はね、蕾の時期が長くてね、咲くのは一日だけなのよ。」
「酔芙蓉と言ってね、白から赤く色が変わるのもあるの。」
「ふうん、そうなの。」と私が興味を示し、色々質問したら、
「あなた、芙蓉が好きなの?」と聞きます。
「そうね、好きかもしれない。」(あまり考えた事なかったけれど。)
子供の頃から、母とは上手く接する事ができなかった私ですが、
そういえば以前、こんな風に散歩が出来たらいいな、と想像した事があった事を思い出しました。
十年前になりますか、吉祥寺でサロンをしていた頃のことです。
客待ちの時など、店頭に立って外の通りを見ていると、いつも通る人を何人か覚えたりします。
その中に、車椅子に乗ったお年寄りのご婦人とそれを押す中年女性がいました。
母娘でしょうか、それともお年寄りと介護スタッフでしょうか。
知る由もありませんが、どこか目的地があるという風ではなく、お喋りをしつつも、
ゆったりとして、大袈裟ではなく僅かに楽しげな雰囲気のお二方でした。
そんなお二人の姿を眺めつつ、傍にいたスタッフに話しかけました。
「あの方達を見ていると、時々あんな時間の過ごし方もあるんだなぁと思う。
今、私は好きな事をやって忙しくしているけれど、あんな風に母と散歩する毎日も良いかもしれないなぁって。」
それにスタッフは何と答えたのでしょうか・・・今は覚えていません。
その時は母もまだ若く元気でしたし、私もまだまだトンガっていて(笑)関係もあまり良くない時でしたが、
母が老いて、私も同じだけ老いて、そしたらこんな風に過ごせるかしら、そうだったら良いな、とどこか願う自分がいたのでしょうね。
そして十数年後、思った事は実現するんですね。
特に叶ったときのフィーリングをリアルに感じられると、実現すると言います。
確かにあの時、あの車椅子のお二人の感じていることがとてもリアルに想像できたのを覚えています。
車椅子こそありませんが、今、私はその願いを実現させています。
体調を崩してから初めて、母が筆を取って絵を書いてくれました。
芙蓉の花です。
by chinagii
| 2022-09-07 16:51
| ふれあい
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